「セックスワーク」という括りの議論にまつわるアレコレ

産婦人科医の先生が、性風俗で働くことをテーマに投稿されたブログ記事に対し、BLOGOSで批評している記事がありました。

「風俗で働く」ことを怒ることは百害あって一利なし

「風俗で働く」若い女性に説教する婦人科医

婦人科医の河野美代子が、風俗で働く(若い)女性たちへの警鐘を鳴らしている。河野さんによれば、性風俗店で働く若い女性たちは「あまりにも無防備」だという。近年は、簡単にセックスワークに従事できるようになり、性感染症にかかったり、望まない妊娠をしてしまったりして、婦人科を受診する。まだ高校生の子どもたちもいる。その子たちへ、河野さんは医者の立場から「こんな無防備なことをしていてはあなたの体がダメになってしまう」と説教するという。

年末にさしかかり、ボーナスも出て、どちらの店舗関係者様もお忙しいことと思います。

私もつられて忙しくしております。
というのは、更新頻度が落ちている言い訳にはなりませんね。すみません。

またもや「セックスワーク」が批判されている?

私は最初に、BLOGOSに寄稿された小松原織香さんの記事を拝読しました。

産婦人科医の河野さんがブログで発信された内容に対して、「風俗で働くことを怒るのは間違いである」と、なかなかのボリュームで反論を述べられていました。

反論の根拠として書かれていることは、なるほど納得することばかりのようですし、私も風俗業界の末席を汚す身として、「また風俗業界関係者の肩身が狭くなるようなことを書かれたかな」と思い、件のブログを拝読しました。

ああ、遅かった!!性風俗で働くということ

風俗で働く女性たち。もちろん、圧倒的に若い女性たち。あまりに無防備なのです。

今、プロのセックスワーカーと、素人の女性たちとの線引きも難しくなりました。

どうしてこんなに簡単にこの世界で働けるの?と思うほど、風俗で働く女性たちが増えています。大学に進学して広島に出てきてすぐにデリヘルで働いている女性たち。まだ18才で、どうしてこんなことか出来るの?と言うほど無防備です。

こちらも長文にてお考えを訴えられているので、さわりのみ引用させていただきます。

面識もないくせにご本人の了解も得ず勝手に意訳しますが、つまりは、
——————–
あまり深く考えずに身体を売って金銭を得る環境に身を置いてしまい、不幸にも産婦人科に通院する必要に迫られた若い女性に対し、「もっと自分のことを大切にしなさい!」と叱っているのだ
——————–
ということでしょう。

…いや、とても真っ当な行いですよね、これは。

分別のつかない餓鬼を大人が叱る。未成年かどうかなど関係なく、中坊の喫煙を叱りつけることと同じ構図にしか思えません。
ましてや大人が子供を叱れなくなった昨今、相手のことを思って叱ってくれるというのは、本当に有り難いことだと思います。

私が気になる問題は、ひとつだけです。

性風俗嫌いでもいい

まず、ブログタイトルが「ああ、遅かった!!性風俗で働くということ」であるため、文章の内容を論拠に「性風俗で働くこと」にNOと言っていると思って読みました。

個人個人で色々と考えがあって当たり前ですし、私は「性風俗で働くことを否定するな」と言いたいわけではありません。
実際、望んで行き着いた人は少ない業界ですし、他にカネを得る手段があればやらない人が大多数です。
親等の近い人間が風俗嬢になるのは、業界に浸かっている私でも、正直なところ歓迎ではありません。

そこはどちらの考えでも正直どうでもよく、私が思うのはただ1点、性風俗店というものを誤認させるのだけは勘弁して欲しい、ということです。

「性風俗」と「性風俗店」では違うだろ、と思われる方がいるかもしれませんが、その辺は後に触れます。

まともな性風俗従事者が1人も出てこない

ブログのエントリーを追ってみますと、出てくる女性は、援デリ女子高生という「18歳未満の売春婦」と、まともな届出を行っている事業者なのかがにわかには判断しづらい「(自称)デリヘル勤めの女性」です。

「(自称)デリヘル勤め」としたのは、私個人の感想によるものです。理由は簡単に以下。

文中、「本番がないことになっているので、コンドームを用意することができないと言います。」とありますが、私には逆に、デリヘル店のオペレーションを思い返す上で、コンドームを用意することが出来ないデリヘル嬢というものを想像することが出来ません。

今は少なくなりましたが、以前は生フェラがオプションのところだってありましたよね。
しかし、コンドーム所持を理由に管理買春でしょっぴかれた店、という話は聞いたことがありません。

しょっぴく理由があるとすれば、コンドームは避妊具で本番を想起させるからダメ、くらいしょうか?流石に無理筋ですかね。

つまりは、不幸にも店側から本番前提で教育されるような環境だっただけで、デリヘルというよりは売春組織に近い性質の店なのでしょう。
一般のデリヘル店にはなかなか当てはまらない環境です。

そもそも、店が正しく届出を行っている風俗店なのかも怪しいものです。単に無許可で運営している不良のシノギのような臭いを感じます。

実際、風俗求人サイトや風俗求人誌経由での入店であれば、大抵が正式に届出のある風俗店ですが、スカウト経由や紹介などの場合はわかりません。
そして、正式な届けがあるか無届かを、女性が改めて調べることはまずありませんし、正しく調べることは困難です。

仮に風俗嬢から店側に「届出確認書を見せて」と要求し、「ここにはコピーだけ、原本は本社の管理部が持ってるよ」などと言われ、即座に(明らかにおかしい)と思える風俗嬢が何人いるのか、という話です。

理由と根拠の詳細はテーマからズレるためコレ以上は語りませんが、本人はデリヘルで働いている気でも、厳密にはデリヘルではなく無届店や違法売春組織だったというケースは、残念ながら無い話でもなく、登場するデリヘル嬢も可能性は高い気がします。

まあ真偽のほどはどうあれ、件のブログエントリーには、一般的な、我々が考えるようないわゆる「性風俗店に勤める女性」が1人も出てきません。

その上で「性風俗で働くということ」というタイトルがつけられているところには、ちょっと待ったと言いたくなります。
違法なシノギと性風俗店で働くことを一緒にされては、一般の方に誤った認識を植え付けることになりかねません。

普通は「性風俗」≒「性風俗店」ですよね

さきほどの意訳に「身体を売って金銭を得る環境」とし、「性風俗」としなかったのは、私個人が性風俗という言葉を、違法・合法クソミソ一緒に語られることに対して強い違和感があるからです。

ちなみにgoo辞書では性風俗はこうなっているようです。

これは私の感覚ですが、性風俗と聞くと、一般的に「性風俗店」と同義に捉える方がほとんどではないでしょうか。

そのため、この後に詳しく述べますが、ブログエントリーに登場するような女性だけをピックアップし「性風俗の悲劇」として括られているのであれば、これは「冗談ではない」となるわけです。

「性風俗の事例」として語られると迷惑

河野さんのブログで看過できない内容として、まず、援デリ(援助交際デリバリーヘルス)を、性風俗として、デリヘルの一種だと捉えている、またはそう思わせる記述があることが挙げられます。

ブログでは、ひとつめのエピソードとして、STD治療に通っている女子高生が登場します。援助交際が原因のようです。

そして、そのエピソードを結んだ流れで、

別の若い女性です。

やはりデリヘルです。トリコモナスとクラミジアの同時の病気で通っています。

・・・

と続くのですが、「やはりデリヘル」という言い方はさすがに酷い。

繰り返しますが、ひとつめのエピソードは援デリの少女について書かれています。
「デリ」とつくためデリヘルと関係ありそうですが、全く関係ありません。
援デリという言葉をあえて使わなければ、単に「高校に通う18歳未満の売春婦による違法な売春行為」です。

デリバリーヘルスは、警察に届出を行い、いわば国のお墨付きをもらっている事業者です。
本籍のわかる証明書や事務所の図面など複数の添付書類をあわせ公安に届出を行い、従業者名簿の作成や3年間の保存を義務付けられ、警察官の立ち寄りもある、真っ当な事業体です。

その2つをつなげて、「やはりデリヘルです」という言い方は、デリヘル事業者全員から「オイ!」という突っ込みが入るでしょう。

さらに記事の後半では、ソープ嬢を「プロだプロだ」と褒めそやすので、まるでデリヘルがアマチュアみたいなコントラストが生まれているからややこしい。

ソープ嬢もデリヘル嬢も、結局のところピンキリです。
参入障壁が低い分、サービス精神のカケラもないデリヘル嬢は相対的に多いかもしれませんが、業種業態で区別されるものでは決してありません。

無愛想でマグロのソープ嬢に当たった気持ちがあなたに…

すみません脱線しました。

また、援デリ高校生の文章の部分に、

「援デリ」ですね。援助交際とデリバリーヘルスの合体したもの。

とありますが、これはもう「突っ込み待ちか?」と思いたくなるような説明です。

「デリ」とつきますが、何度も言うようにデリヘルとは全然関係がなく、似て非なるものなわけです。
ネットと電話一本で売春婦を届ける売春行為、デリバリーして行う援助交際、それがいわゆる援助交際デリバリーヘルスでしょう。

届出もなく違法な店や個人は、今は情報サイトや風俗誌に広告の出稿も出来ませんので、客集めはもっぱら掲示板などになります。
マンパワー使って掲示板で客を釣るなど、普通のデリヘルでそんな集客を行っているところは、聞いたことがありません。

まあ不心得なデリヘル事業者が、表向き正式な届出で営業をしているように装い、実際は管理買春を行っていて逮捕されたなどという話は、当サイトでいやというほど紹介してきましたが、やはり「援助交際」という語感は、いまだ強く「18歳未満の女子中高生」を強く想起させると思います。

デリヘルはそもそも18歳未満を使えませんから、余計な言い回しでデリヘルまでオカシなものだと誤認させないで欲しい、というのが、デリヘル側にいる私の素直な感想です。

ちなみに当然ですが、私が文中で使っている「デリヘル」には、無届けの違法店や本番店は含みません。

あとは、「関係ないのに犯罪名にデリバリーヘルスって付けるなよ、デリバリーでいいだろ」といった感じですね。

飲食に置き換えるとわかりやすい

援助交際(という名の売春)とデリバリーヘルスを同列で語られ、それを性風俗としてひとくくりにされる違和感は、それぞれ飲食店に置換えてみると、より多くの人に実感してもらえるかもしれません。

保健所に食品営業許可申請をし、食品衛生責任者を置いて営業している、いわゆる普通のレストラン(デリヘル)と、道端で無許可におにぎりを販売している「ただの人」(援交)を、扱うものが同じ食品というだけで、どちらも同じ飲食店だと言っているようなものです。

まともにやっている人が割りを食うような発言ならやめて

以下は河野さんのブログの記事から離れますが、今年のはじめに、セックスワーク・サミット2012の記事を読んでという記事を書いたあとにも「ああ、書いておけば良かった」と後悔していたことです。

私は常々、「セックスワーク」「性風俗」というテーマが出てきた時に、必ずと言っていいほど援助交際や違法店を事例の中心に据えていることに対してイラだっています。

そうしたテーマの場合、大抵は発信者が性風俗の現場における悲劇を訴えたいことがほとんどですから、インパクトを求めるあまりそうなるのも必然なのかもしれません。

セックスワーカーという用語が一般的かというとそんなことはなく、能動的に調べる人も少数派でしょう。
私はこの用語が嫌いで、使うこともそうそうありません。

嫌いな理由は、風俗業界の外にいる人々に対し、間違った性風俗店の認識を植え付けるきっかけになっていると感じるからです。

それは、本人の毛嫌いからくる悪意ではないか、と思うことすらあります。

ちなみにweblioによるセックスワーカーの説明はこういった感じです。

「金銭の授受を伴う性行動を職業として行う者」だそうです。
職業とは、「生計を維持するために日常従事する仕事」とのことですが、では現役女子高生が小遣い稼ぎで行う援交が含まれるのかは、私には明確な答えはわかりません。

援交で得たカネで明日のコメを買う女子高生でもいれば別ですが、大抵は含まれない気がしますけどね。

そんな曖昧な定義の用語をテーマに置きながら、違法風俗、合法風俗、不良の小遣い稼ぎの明確な線引や十分な説明もないまま、例えば援助交際のような、風俗店が全く関係ない事例においてまで、「性風俗店の現状」のようなニュアンスで一般に伝わるのはたまらないと思っているんですね。

ましてやその違いを明確にせず「性風俗はすべからくロクでもないから、性風俗業界に近づいたらダメ」といったトンデモ理論で締めくくられたりするのですが(主に人権系)、そうなるとさすがに「この野郎」と思ってしまうこともあります。

やはり、現場の正しい状況認識とその説明責任を放棄して「ダメだダメだ」と訴えていても、本人が満足するだけで何も伝わらないだろうと感じます。
やらないよりやった方がまし、でもなく、誤認を与える分だけマイナスです。

例えば、一部のブラック企業についてだけ悲劇の事例を取り上げて、「だから会社組織ってのはダメなんだ」と訴えられているようなもので、ダメなのは会社組織ではなくて、ブラック企業とお前だろ、と言いたくなります。

そしてまた長くなりましたね

ともかく、ブログを書かれている河野先生は、来院してくる分別のつかないコドモが、危うい道に進んでいることを心配して叱りつけて下さる素敵な先生ですから、本来こんなに長々と突っ込み記事を書くこと自体が本意ではなかったんですが…

ただやはり、女性に感謝し、感謝されながら、胸張って頑張っている風俗店もあるわけでして、世間に文章を発信する以上、そこにもう少し配慮があったら嬉しかったという、ただそれだけです。

こんな感じでどうでしょうか、Tさん。

関連ニュース

コメントは受け付けていません。

ページTOPへ