セックスワーク・サミット2012の記事を読んで

記事を見つけた時に、正直スルーしようかな…と思っていたのですが、「取り上げてよ」というお声をいただいたため、ちょっと感想を。

元記事 → セックスワーク・サミット2012・風俗嬢の『社会復帰』は可能か? ―― 風俗嬢の『社会復帰支援』の可能性を考える -BLOGOS-

最初に、風俗に関するあれこれが大きな媒体に掲載され、多くの読者の目に触れることで、世間一般に課題が認知され、有益な問題提起の機会が広がるならば、大手が風俗テーマを取り扱う場合にありがちな「安易なPV集めの臭い」がしようと、良いことだと思っています(通常エントリーのテイストで書いてる広告記事は、大抵がクソばかりですけどね)。

その上で、今回掲載されている内容には、全般的にやや残念な感想を持ちました。

私自身、売文屋ですらない一介の風俗業崩れで、業界の末席を汚しながらあれこれモゾモゾやっている程度ですので、以下はまあ「批判するのは簡単だよな」と、懐疑的な眼でお読みいただくぐらいで丁度よろしいかと思います。

風俗嬢の「社会復帰」?

まず、会の趣旨は、主催が言うところの「セックスワーカー」の社会復帰について考えるということでした。

炎上を狙ってか本気なのかはわかりませんが、法律で認められた仕事で、法律上正当な届出のもとに営業活動が行われている店舗で役務を提供し対価を得ている人をさして、その人の「社会復帰」について論じるというのは、さすがに問題提起としてもヤンチャが過ぎるでしょう。無理筋です。

それまでに様々な経緯があって、連続性を持った議題の一つなのだとすれば話が変わってくる可能性も…いや、やっぱり無いですね。

記事中の坂爪真吾氏の発言に

サミットのキーワードは、「セックスワークの社会化」。社会化とは、分かりやすく言えば、「日常生活のなかで、誰もが当たり前に利用でき、働くことのできる仕事にする」という意味です。

とあります。

ただまあ性風俗自体は、日常生活のなかで、(概ね)誰もが当たり前に利用でき、働くことのできる仕事になっているわけです。
(ここでいう社会化には、きっと障害者の性介助につながる意味合いが含まれているのだと思いますが)

言わんとするところは「風俗勤務を後ろめたくないものにするために、社会の見る目を変えなければ」ということなのだと思いますが、これとあいまって、言外で「風俗嬢は社会的に可哀想な連中だから支援したい」と言っているように捉えられるのも仕方なく、これでは当事者に限らず顔をしかめるというものです。

風俗業に対する社会的な貴賎の意識を問題視している当事者が、風俗という職業に貴賎があることを前提にアレコレ論じているわけで。
(坂爪氏の取り組む「障害者の性介助」については、個人的に問題意識を感じつつ何も行動を起こせていない分野であり、肯定的に捉えているのですが、この話は別)。

参加されている方々の活動が、純粋な良心からくるものであろうと、風俗嬢をダシに使って商売を目論んでいるだけであろうと、その活動により救われたと思う人がいる限り、私を含めた傍観者の眼にどう映ったとして、きっとどうでもいいことだと思います。

そして、「身近な人を助けたい」という動機は素直に素晴らしく(記事後半の角間惇一郎氏の発言にもあります)、本来自分の可能な範囲でそれを行えば良いと思うのですが、そこに変な大義を持ち込んだりしたら、そりゃ途端に胡散臭くなるよな、と。
(どうやら参加者全員がそういうわけではなさそうですが…特に角間氏はもっとカジュアルな印象)

なにせ、先に触れたように、テーマ自体が横槍待ちのような感じなので、ハナから懐疑的な眼に晒され、

「まあ”身の回りの人助け”なんて漠然とした活動ではNPO要件なんか満たさないし、「社会」「支援」といったキーワードに絡めた活動が必要なんじゃないの?助成金?補助金?ナメんなよ」

という見方をされたとしても仕方ないかな、と思います。

キャスティングの問題

やはりというか、元記事のコメントも批判的な意見が多く寄せられているようで、そういう面でも今回のサミット風景の露出は損だったのではないかというのが、サミットそのものに対しての個人的な印象です。

サミットに参加された方々が携わる事業の共通項が、たまたま「風俗嬢」だっただけで、理念や目指すところに類似性がなく、実際に行われている事業・核となる取り組みにも乖離があるようで(ケアサービスと、ネットショップや情報サイトと、就業支援的な駆け込み寺?)、そうしたメンツで「風俗嬢の社会復帰支援」というテーマでセッションしてしまった結果、あまり噛み合わなかったのかもしれません。

事実、個々人のヒアリングや調査レベルにも結構な開きがありそうな印象で(推測ですが後に触れます)、噛み合っていないというよりは、主催者の狙いとは離れてしまったのかな、という雰囲気を感じました。
それも、閲覧者に響かなかった大きな要因のひとつだと感じます。

個別に「むっ」と思ったことなど

ここからはほぼ攻撃のようになってしまうかもしれませんが…

文中でガールズケア代表の中山美里さんが

風俗業界も不景気の煽りを受けて、稼げない仕事になっていて、1ヵ月フルで働いても20万円しか稼げない世界になっています。

と断じていますが…

確かに風俗業界も不景気の煽りが無いとはいえません。
過当競争にさらされ、店舗あたりの利益は総じて減っているようにも思えますが、それでもデリヘルの店舗数は前年比10%近い伸びを見せており、また性風俗の市場規模は5.7兆円と見られ、これは旅行業界の総取扱額と並ぶ規模との試算もあります。

店舗増加数と市場の伸びは正比例ではなく、単純計算では店舗単位での利益が減っているとも言えますが、こうしたマクロの前提を放っぽって「業界自体が稼げない」かのように喧伝されてしまってはかないません。
真面目にやって売上たてている店からすれば「ちょっと待った」と言いたくなります。
私の知る関係者の中にも、頭に来た人が多くいらっしゃるのではないでしょうか。女の子が業界を敬遠するようなことを言うんじゃないよと。

(ちなみにご本人は業界にどっぷり、とのことで、どれほどの調査や体感をお持ちかは存じませんが、私も業界の端くれとはいえ、売上/利益を数ヶ月以上の期間に渡り見てきた風俗店のみカウントしても100を下りませんので、比例してそれなりの体感を持っているつもりでいます)

もちろん十分に稼がせることが出来ないお店、というのは少なからずありますが、ダメなところは不景気関係なくダメです。

そして、店が変わって花開く女性もいるにはいますが、何も努力せず提供するサービスも変わらずに上がる収入など一時的なもので、本当の意味で伸びた女性というのは、お店なりお客さんなりのアドバイスを受け入れ、自らを高める努力をした結果であることがほとんどです。
また本人に努力というほど大仰な意識がなくても、ちょっとしたコツを知るだけで、伸びる人は伸びます。

もっと言えば、稼げる人はどこにいっても稼げます。最初から稼げる人が多いです。稼げない嬢はどこにいっても稼げません。

20万円しか稼げないということは、女性が「20万円の仕事」しかしていないだけです。
容姿もさして変わらないのに20万円稼ぐ女性と40万円稼ぐ女性がいるのは、収入に20万円上乗せできるだけの仕事をしているかどうかの違いだけなんですよね。

自分自身が唯一無二の売り物であるサービス業ですから、実力主義のシビアな世界なのは当たり前です。給料横並びの公務員じゃないんですから。
不平等な側面はありますが、それを悪として平等の意識からスタートしてしまったら、店の運営なんて正直やっていられません。

私はほぼ性風俗畑しか歩んでいませんが、性風俗というのは芸能界のような不平等な面が前提としてあり、ただし芸能界よりフェア、本人の努力が比較的反映されやすい業界だと考えています。

地域の競合店同士も、それぞれの店の中でも、比較的健全に競争が繰り広げられていることが多いです。
当然、悪い噂を流したり枕で付け回しを変えたりと、行儀の悪い店もありますが、まあ大抵が長続きしません。

「私はもっと稼げる」と思う人は、人気店に移籍すれば良いのです。
その辺の動きやすさ、軽いフットワークを許容してくれるというのは、この業界ならではですからね。

自身の知見に基づき何を発言するのも自由だと思いますが、稼げないのは業界のせいではない、それだけはしっかりと言っておきたいです。

金銭感覚のズレをただす?

角間氏が記事中で指摘する「風俗嬢の金銭感覚のズレ」については、確かにその傾向はあると思います。

ただまあ、ズレた金銭感覚の持ち主ということであれば、風俗に無縁だったバブル期のOLも、凋落した名家のご婦人も、たまさかギャンブルの調子が良く太っ腹のオッサンも同じ事です。
例えば新卒数年で年収が数千万ある外資系の20代が、何故そうならないかと言えば、もう個々人の知見や、それまでの教育といったレベルの話しかないわけです。

突然他人から「金銭感覚のズレを是正する」などと言われたら、それがどんなに相手を思いやった末の行動だとしても、相手からしてみれば哀しいかな大きなお世話でしかなく、身内でクンロク垂れる分には好きにしてもらえば良いですが、「風俗嬢」という切り口でまとめることではありませんし、事業活動としてこれをするなど、ただただ相手を選別し下に見ての尊大な行動にほかなりません。

角間氏は、記事中で風俗嬢にアンケートを取ることの難しさについても述べていますが、先に述べたような意識ありきでは、回答を得るのは困難を極めるだろうと思うわけです。

やはりアンケート調査の絶対数や深度が気になる

私が記事の評価を下げている要因として、どうも女性や店舗関係者に対する調査が充分でないのでは、という印象が拭えないこともあります。

アンケート調査の対象人数がどの程度なのかなど、当然外部からはわかりかねますが、例えば過酷な勤務実態の例として挙がるのが「本番も可能なピンサロ」だったり、切り取る部分が一般論にはあまり当てはまらないものが多いように感じました。

風俗嬢と接する人数となると、それなりに売上の立つお店であれば、入店面接だけで年間3桁近くこなすような店舗関係者というのは、けっこういるわけです。

入店面接よりもはるかに濃い話となる女性との面談・身の上相談については、女性のケアを重んじる店であれば、店長・マネージャークラスの業務の大半がコレ、といってもいいくらいのお店もあります。

風俗嬢の支援云々を店発信ではなく外部から語るのであれば、最低でもある程度説得力を持つ調査をしてからでないと、女性も含めた店舗関係者に失礼だと思うのですが、その辺りの実際はどんな感じなのでしょうね。

店の1店でも運営している・していた経験などおありならば、そこまで気にする必要はないでしょうけど、参加者の来歴を拝見した限りでは、自身の店舗経験・風俗嬢経験は少なく、あったとしても限定的のようです。

先程のアンケート調査の難しさもそうですが、店長やマネージャーが在籍女性の相談に乗ることと、店の外から「支援したい」とアンケートを試みることでは、残念ながら深度も密度も、回答の信憑性すらぜんぜん違うものになるのは明白です。

風俗嬢はシビアですからね。店舗スタッフ相手の会話にしても、責任ある立場の人間以外とは率先して話さない女性というのも多く、原則として電話番など名前すら覚えてもらえないものです。
小規模な店ならともかく、数人で受付をしているような店であれば「メガネのコ」「ヒゲの子」など、特徴を把握してもらってれば良いほうでしょう。

ただでさえそうした難しい相手に、(当人にその気はないのでしょうが)自分本位でアンケートを募ったところで、そのアンケート結果の有用性は、どうしても乏しく思えてしまうのです。

風俗における「40歳の壁」について

これも、他業種と切り離して風俗嬢だけを切り口にするだけの根拠に乏しい問題です。
いわゆる高齢によるキャリアチェンジの難しさというのは、バブル崩壊以後の20年、どの業界においても変わらない課題です。

風俗嬢の旬の期間は短いかもしれませんが、だからといって多くの同僚が長期間一線級でいられるなど、風俗に限らず夢物語でしょう。

もちろん風俗をあがって別業種に就くことは確かに難しく、また風俗嬢の大半が「本当は別の職業に就きたい、就きたかった」と考えているのも事実ですが、別の業種、別の会社に憧れるなんて、それこそハタからみたら順風満帆そうに見えるサラリーマンでも同じ事で、未上場企業に入社した人が本当は本命の一部上場企業に入りたかったということと同じようなものです。私も同類です。

また、複数の選択肢からわざわざ選んで入ってきた人は少ないですが、多くが「手っ取り早く稼ぎたい」と自分の意志で入店しているのもまた事実です。

なかなか別業種への就職が決まらないのも仕方がありません。
企業の目的は慈善事業ではありませんので、できるだけ自社の業務に活かせる経験を積んできた人材や即戦力となる人材を確保したいのは当たり前です。

結局のところ風俗云々ではなく、その会社の求める業務に活かすことが出来ない全く畑違いの仕事をしてきた人や、何か売りを持てるようなキャリアパスを描いて社会人生活を送って来なかった人、自宅警備が長く履歴書に空白が生まれてしまった人などが、市場原理からその企業の振るいにかからなかった、ただそれだけのことです。

別業種への就職が困難な現実はあれど、風俗だけことさら強調する理由はありません。

すみません、長いですね。

…っと、個人的な愚痴かよと思うくらい、つい熱くなってしまい、言いたいことは尽きないのですが、さすがに長くなってしまいました。

記事の後半で角間惇一郎氏が語っているように

今まで出会ってきた女の子はぼくにとって身内で、とにかく困っている。だったら「社会がうんぬん」ではなく、とにかく相談にのって、出来るかぎりのことをやりたい。

それなら話はわかりやすいし、批判する理由などもちろん無く、単純に偉いと思いますし、思う存分やったらよいと思います。それを個々人の範囲で続けて下さるのが一番です。

偏った現状把握で女性にも客にも誤解を生むような話を広く開陳されるのは、誰にとっても得がありません。

と、こんな感じでいかがでしょう、Tさん。

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